リースバックでは、売買契約と賃貸借契約を続けて結びます。説明の中心は売買の金額になりがちですが、住み続けるうえで大事になるのは賃貸借契約のほうです。
ここでは、署名したあとでは変えられない項目を挙げます。条項の有効性についての判断は個別の事情によりますので、当サイトでは一般的な情報提供にとどめています。迷う条文があれば専門家や不動産会社等にご相談ください。
賃貸借契約で確認する項目
1. 契約の種類と期間
「定期建物賃貸借契約」と書かれていれば定期借家です。期間が満了すると契約が終わり、住み続けるには再契約の合意が要ります。再契約の条項があるか、どういう条件か、いつ知らされるかを確認してください。
詳しくは何年住めるのか|定期借家契約の落とし穴で扱っています。
2. 修繕は誰がするのか
賃貸人(大家)の修繕義務は民法606条1項に定めがありますが、当事者の合意で変更できる規定とされています。リースバックでは特約で外す形が一般的です。
ここで取り違えやすい点があります。
大家の修繕義務を外す特約は、借主に修繕義務を負わせるものではありません。
義務が移るのではなく、消えるということです。直さなくても住めるのであれば、貸す側から「直してください」と求められる筋合いのものでもありません。自分が直したいと思ったときに、自分の判断と費用で直すことになる、というのが実際のところです。
そのうえで、契約書では次の2つを分けて見てください。
- 大家の修繕義務を外す条項があるか
- 借主に修繕の義務を負わせる条項が、別に置かれていないか
2つ目が置かれている契約であれば、話は変わります。負担する範囲がどこまでか(消耗品か、給湯器やエアコンのような設備か、雨漏りや構造部分まで含むのか)、金額の線引きがあるかを確認してください。
3. 手を入れてよい範囲
修繕とあわせて見たいのが、自分で手を入れられるかどうかです。
元の持ち主であれば、直したいところや変えたいところの見当がついているはずです。リフォームや設備の入れ替えを借主の判断でやってよいと定めている契約もあります。範囲と、大家の承諾が要るかどうかを確認してください。
4. 原状回復の範囲
退去時にどこまで戻すのかです。元の持ち主がそのまま住み続ける形なので、入居した時点ですでにある傷みをどう扱うかが問題になります。
入居時の状態を記録した書面や写真があるか。経年変化と通常損耗が借主の負担から外れているか。自分で手を入れた部分を戻す義務があるか。
入居時の記録が残っていないと、退去時に「もとからあった傷み」と「使っていて生じた傷み」を分けられません。
5. 造作買取請求権(借地借家法33条)
借主が大家の同意を得て取り付けた設備について、退去時に買い取るよう請求できる権利です。この規定も特約で排除できるとされていて、リースバックの契約では排除する形が使われることが一般的です。
手を入れるのが自由な契約ほど、この項目の重みが増します。自由に設備を入れられるが、出るときにその費用は戻らない、という組み合わせになるためです。
自分で設備を入れる予定があるなら、費用が戻らない前提かどうかを確認してください。
6. 賃料の改定
家賃を変えられる条項があるか、あるならどういう基準かを見てください。定期借家では、再契約のたびに決め直しになることがあります。
7. 中途解約
借りている側から解約できるか、予告の期間はどれくらいか、違約金があるかです。将来的に子どもの家に移る、施設に入るといった可能性があるなら、ここは確かめておきたいところです。
8. 家賃債務保証と更新料
保証会社の利用が必須か、初回と更新時の費用はいくらか。リースバックでは、元の持ち主であることや売却の理由が審査に影響し、通常の賃貸より保証料が高くなる場合があります。
売買契約で確認する項目
9. 買戻しの取り決め
買い戻せる形が付く場合、価格・期間・条件を確認してください。買戻し価格は買取価格より高くなるのが一般的です。
あわせて、その時点で資金を用意できるかを考えてください。権利があっても、住宅ローンを組めなければ実行できません。年齢や収入の条件は年々厳しくなります。
10. 契約不適合責任
売主が引き渡し後の不具合について責任を負うかどうかです。免除する特約が付くこともあります。そのまま住み続ける形なので、不具合が見つかったときに誰が直すのかが、賃貸借契約の修繕条項とつながります。2つの契約を並べて読んでください。
11. 手取り金額の内訳
契約書ではなく精算書の話ですが、決済のときに何がいくら引かれるのかを事前に一覧でもらってください。
| 差し引かれるもの | 内容 |
|---|---|
| 住宅ローンの残債 | 抵当権を抹消するために必要な金額 |
| 売買仲介手数料 | 800万円以下の売買は33万円(税込)が上限 |
| 印紙税 | 売買契約書に貼る |
| 抵当権抹消費用 | 登録免許税と司法書士報酬 |
残債が買取価格に近い場合、決済時に自己資金の持ち出しが必要になることがあります。抵当権を外せるかどうかと、費用を賄えるかどうかは別です。
確認の進め方
契約書は署名の直前に渡されることがあります。その場で全部を読み解くのは現実的ではありません。
契約書の案を事前にもらってください。分からない条項に印を付けて、一つずつ説明を求めてください。「一般的にはこうです」ではなく、この契約書ではどう書いてあるかで答えてもらってください。判断に迷う条文は、署名の前に専門家や不動産会社等に見てもらってください。
急かされる理由がある取引ではありません。知ったうえで、それでもリースバックが必要かどうかを判断してください。
買う側は契約書をどう作っているか
ここからは買う側の話です。私は大家として築古の戸建を買い、そのまま貸しています。自分の契約でどう定めているかを書きます。一般論として正しいという意味ではありません。
修繕義務は特約で外しています
通常の賃貸借契約であれば、原則として修繕は大家の負担です。私はリースバックの場合、特約で「大家の修繕義務は発生しない」とさせてもらっています。
理由は2つです。売買が成立すれば所有権は買主に移りますが、売主さんはもともとその建物に住んでいた方で、家の状況を誰よりもご存じです。そして起きている不具合は、それまでの使われ方に由来すると考えるのが妥当だからです。
ただ、これは売主さんに修繕義務が生じるという意味ではありません。直さなくても住めるのであれば、貸す側から「直してください」と言えるものではないと考えています。
そのぶん、手を入れるのは自由にしています
修繕義務を外すかわりに、物件に手を入れたい、リフォームしたい、新しい設備を入れたいという場合は、建物の価値を損なうものでなければ借主さんの側で自由に行ってよいという内容も特約に入れています。
長く住んでいただく前提なので、住みやすいように変えていただくほうが自然だと考えています。
造作買取請求権は適用していません
これは適用しない形にしています。リースバックでは一般的にそのようです。
上に書いた「手を入れるのは自由」と組み合わせると、自由に設備を入れられるが退去時にその費用は請求できない、という関係になります。この点は理解したうえで判断していただきたいところです。
入居時の写真は不動産会社に残してもらいます
不動産会社が面談する際に、物件の確認とあわせて写真を撮って残してもらっています。買主が建物の中に入ることは基本的にありません。
いちばん多い質問は「またほかの人に売られるのですか(オーナーチェンジ)」
正直なところ、質問を受けること自体があまり多くありませんが、あるとすればこれです。
答えは「基本的には売るつもりはありません」です。入居者として安定しているからで、理由は何年住めるのかに書いたとおりです。
普通に家賃をいただけているのであれば、売却は基本的に考えません。
不動産業・賃貸業を営む業者のなかには、短期で売買することで利益を上げるところもあります。ですが私はそれは望んでいません。大家が変わると、入居者の方に何かしらの負担や不安が生じるかもしれないからです。
ただし、家賃の滞納があれば売却の可能性は高まります。そこは正直に書いておきたいと思います。
契約条項を確認したら、金額の面も見てください。成立するかどうかと、毎月の支払いが3つの選択肢でどう変わるかが出ます。氏名も電話番号も入力しません。
計算結果は概算です。実際の買取価格と契約条件は、建物の状態と土地の条件を見ないと出ません。査定は、提携している株式会社アール(宅地建物取引業者 岐阜県知事(4)第4590号)にご相談いただけます。